卵、小麦、牛乳、ピーナツなど食べ物のアレルギーが問題となっています。
数年前に東京で、学校給食の際に誤ってアレルギーのある食材を食べてしまい、アナフィラキシーショックを起こして命を落とす事故があり、学校現場でも食物アレルギーへの対策が進んでいます。
私も勤務医時代に、食物アレルギーの講義を小中学校の教職員の皆さんに対して毎年行ってきました。ここ数年は文科省の作成した動画教材を用いて講義するのが中心となっていました。この教材は文科省のホームページで公開されていますので、どなたでもご覧頂けます。
文科省の教材の中でも強調されていますが、食物アレルギーの診断や食事制限は慎重に行う必要があるのです。「アレルギーの検査を受けてきてくださいと言われました」と病院を受診する方は少なくありませんが、実はアレルギー検査(血液検査によるIgE抗体価)だけで診断することは適切ではありません。検査と実際とは必ずしも合いません。検査でアレルギーがあるというだけで、不必要な摂取制限をしていることが多いのが現状で、文科省もこの問題を懸念しています。
正しい診断には、実際に食べてみてアレルギー症状が出るかどうかを調べる必要があります。これを「経口負荷試験」とよびます。アレルギーが疑われる食材を、ごく少量から、一定時間をあけて少しずつ量を増やしながら食べていくのです。実際の量の決め方や、検査のすすめかたは標準的な方法がガイドラインとして決められています。
重症な食物アレルギーでは、原因食材を食べることで、アナフィラキシーショックといって全身にアレルギー症状が出てしまい、血圧低下や意識障害を起こし、場合によっては命に関わることがあります。重症例はアレルギー専門医による、検査や診断、治療が必要です。
一方で、心配だから食べさせていない、体調が悪いときに食べてじんましんが出た経験あるといったことから、当該食品を除去していることも少なくないのが現状です。しかし、卵などの食材は栄養面でも重要であり、多くの食品に用いられていることから、不必要な制限をすることは、食べることが出来る食品が制限されるだけでなく、栄養面でもデメリットが大きいのです。不必要な制限をしないというのが一番大切なことで、文科省もこの点を強調しています。
先にも触れましたように、除去が必要かどうかの判断は、血液検査などのアレルギー検査で決まるものではなく、実際に食べて症状が出るかどうかによります。経口食物負荷試験がどうしても必要になるのです。当院では、詳しく問診し、必要なら検査を行った上でアレルギーのリスクを判断し、軽症と判断できるケースに限り、ガイドラインに沿って負荷試験を実施いたします。ハイリスクと判断した場合は、専門医療機関へのご紹介を致します。九州厚生局に届け出を済ましております。