毎月診療応援に来ている静岡の病院での一コマ。
スポーツマンの栄養相談が2件続いた。
クラブチームに所属しているほどのエリートスポーツ選手の中学生。今年は熱中症様の症状を2回も経験したとのこと。今年の本州の暑さは尋常ではなく、スポーツ中に熱中症様の症状が出たとしても仕方ないのかもしれない。しかし、コーチから調べてくるように指示を受けたとのこと。
詳しくお話を伺ってみると、マルチビタミンを使っている、塩タブレットなど塩分補給に気を遣っている。水やスポーツドリンクで水分補給は欠かさない。このように、しっかり対策を取っているようであった。
熱中症は、同じ状況に置かれていても、症状が出るかどうかは人それぞれ全く異なる。体調にもよるだろうし、その年のトレーニング状況にもよるだろう。難しい問題だ。
そこで、一通りの栄養評価をすることにした。まず最初に評価するのは、ビタミンB、タンパク質、鉄である。
フェリチンは60台で何かしら症状が出るような悪い状況ではない。しかしUIBCとTIBCが高く、赤血球がうまく鉄を利用できていない状態であった。Hbは13台と普通なら問題なしとする状態。赤血球の大きさを示すMCVも90弱でまずまず。UIBCだけがほかの数値と合わない状況。
さて、この選手は鉄は足りているのでしょうか?貧血はないのでしょうか?
結論から申し上げると、他の検査項目からVB群不足がありそうでした。おそらく葉酸不足もあるのでしょう。VB不足のため鉄の利用が不十分となりUIBC高値になっているのでしょう。さらに葉酸不足がありMCVが高めになっているのだと思われます。
この選手は、VB不足、葉酸不足、鉄不足なのです。VBや葉酸を投与すれば鉄利用が進み、フェリチンはきっと低値となることでしょう。鉄は実は不足しているのです。フェリチンの値だけでは間違ってしまいそうですね。
多くのスポーツ選手は様々な栄養不足状態にあると思われます。パフォーマンスアップには、栄養状態の適切な評価が必要ですが、現状では選手やコーチの意識が高いとはいえません。間違った栄養指導も原因の一つでしょうね。
もうお一人も、やはり鉄とVB不足、タンパク質不足が疑われました。